2018年8月5日日曜日

「聲の形」障害を問題とする作品ではない!人間の根源的な問題点を少年、少女が苦しみながら成長していく姿から浮き彫りにしていく感動的なアニメ!!

 2016年に公開された日本のアニメーション映画。原作は同名の漫画である。
 映画の冒頭、高校性の主人公、将也は身の回りの物を売り払い、アルバイトで蓄えた貯金をおろして、母親の枕元にそっと置くと家を出る。彼は自分の人生の幕を自らの手で閉じようと決心していたのである。家を出た将也は、遠く小学生時代の思い出を追憶するのだった。
 小学6年生の将也はクラスのガキ大将。仲間二人を引き連れ、毎日を楽しく過ごしていた。そんなある日、一人の少女、硝子が転校してきたことで将也の日常が大きく変わってしまう。硝子は耳に障害があり、補聴器を付けていても十分に聞き取ることはできず、話すことも困難だった。はじめは硝子に優しく接しようとしていたクラスメイトも、少しずつ態度を変えて行き、やがて硝子は一人ぼっちになってしまう。それでも、みんなと交わろうとする硝子に、いらだった将也は補聴器を取り上げると捨ててしまう。補聴器がいかに高価なものか小学6年生にはわからない。将也が8個目の補聴器を壊したとき、教室に校長が訪れ、「補聴器がなくなったり、壊れたことについて誰か知りませんか?」とたずねたことで、将也は担任やクラスメイトから糾弾される。このことをきっかけに、将也の周囲は大きく変わってしまう。将也の親友だった二人は、毎日、将也をいじめるようになり、他のクラスメイトからはシカトされるようになった。それは中学まで及び、将也は自分の生きる価値を見出せなくなっていった。
 高校3年生になった将也は、自分の人生を終えることを決意する。その前に硝子にあってきちんと謝罪したいと考えた将也は、手話教室を訪れる。そして、将也と硝子、二人の再会によって、大きく物語は動き始める・・・。
 この作品には、主人公の将也・硝子をはじめ、たくさんの少年少女が登場する。そして、それぞれがそれぞれの形で「生きにくさ」を感じ、どうしたらよいのかわからず、悩んでいる。「一人ぼっちは嫌だ。でも、どうやって他人とつながっていったらいいの?」思春期の少年少女ならば(あるいは大人になっても)、誰もが感じる悩みであり、不安だ。この作品では、観客にそれをストレートに突きつけ、目をそらすな!と訴えかける。だから、映画の登場人物は観客にとって鏡であり、今現在の自分や過去の自分を映し出し、痛みさえ感じさせる。日本のアニメーションは実写以上にリアルで、完成度が高いことを再認識させられる傑作だ!
 ※ただ、映画の中で主人公二人が、苦しみから逃れようとするすべとして取る方法は、絶対あってはならないものだ。そのあとの、家族の痛みや苦しみにこそ注目すべきである。おそらく作者の意図もそこにあるはず。あとひと月で夏休みが終わるが、この作品を最後まで見れば、「希望」を感じることができるはずである。
        頑張れ!思春期!的評価・・・・・☆☆☆☆☆

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